ホスト:こんにちは。今回はですね、あなたが共有してくださった資料、月間エントーニ突発性難聴とEBMから見た突発性難聴の臨床。この2つをもとに突発性難聴について深掘りしていきたいと思います。今回のミッションはですね、突発性難聴が単に聞こえにくいってだけじゃないぞと。特に片耳だけ聞こえにくい場合の脳への影響とか あと、意外と知られてないかもしれないステロイド治療と精神状態のあの関係、それから聴覚補充現象っていうちょっと厄介な症状、これらに光を当てて、大事なポイントを抽出していこうと思います。早速いきましょうか。 まず、本当に基本的なところからですが、突発性難聴って、あの多くの場合、片方の耳だけなんですよね。
ゲスト:はい、そうです。
ホスト:で、資料によると、やっぱり左右で聞こえ方が違うとこれが思った以上にその脳に負担がかかることがあると。
ゲスト:ええ、そうなんです。左右の耳から入ってくる音の情報が、まあアンバランスだと、脳はそれをなんとか処理しようと常に頑張る状態になるんですね。
ホスト:ああ、なるほど。
ゲスト:これがなんかこう、疲れやすさとか、人によってはちょっとめまいみたいな感覚につながることもあるというわけです。
ホスト:へえ、脳が混乱しちゃうみたいな感じですかね。
ゲスト:そういうイメージですね。
ホスト:で、ここからがちょっと驚くというか。えっと、治療でよく使われるステロイド。これが副作用として、まさかその・・・うつ状態を引き起こすことがあると。 その結果、音に対してすごく過敏になってしまう。そういうケースがあるって資料には書いてありますね。
ゲスト:ええ、これは非常に重要な点だと思います。聴力をね、なんとか回復させようとステロイドを使う一方で、その副作用で精神的なバランスを崩してしまう。で、かえって音に苦しむ状況が生まれる可能性があると。
ホスト:うーん
ゲスト:さらにですね、もっと厄介なのは、その音への過敏さに対して、今度は強い安定剤なんかが処方されると。
ホスト:はい。
ゲスト:それにまあ、依存してしまうというか習慣性の問題が出てきて別の体調不良を招くっていう・・・なんかそういう悪循環に陥るケースもあの報告されてるんですね。
ホスト:うわぁ。
ゲスト:ええ、治療がある意味、新たな問題を生んでしまうというちょっと皮肉な状況もあるわけです。
ホスト:いや、それは本当に複雑ですね。良くなるために治療してるはずなのに、かえって別の苦しみが増えるかもしれないって。で、そういう複雑さの中でもう一つ、これまた非常に興味深いというか、まぁ厄介な症状が聴覚補充現象。これはえっと、難聴のはずなのに、ある一定以上の音が、むしろ健康の方の耳より大きく、こうキンキン響いて不快に感じてしまう。
ゲスト:まさにその通りで、逆説的な現象ですよね。
ホスト:ええ。
ゲスト:資料にもありますけど、例えば金属が擦れる音。 あとはまあ、スクーターの排気音みたいなものが、もう耐えられないほど響くことがあると。
ホスト:うんうん。
ゲスト:原因としては、内耳、特に音を電気信号に変える、あのー有毛細胞という細胞の障害じゃないかと考えられています。
ホスト:内耳、有毛細胞ですか。
ゲスト:はい。で、問題なのは、音量自体は大きく感じてしまうのに、言葉の聞き分け能力、専門的には明瞭度って言いますけど、 それは低いままなんですよ。
ホスト:ああ、なるほど。
ゲスト:だから単純に補聴器とかで音をワーッと大きくしても、かえってうるさいだけで肝心の会話が聞き取れない。なんてことになりがちなんですね。
ホスト:聞こえにくいのに大きな音はもっと辛いって大変ですね。それで、この補充現象があるかどうかを、えっと調べる検査もあるんですよね。
ゲスト:ええ、あります。 代表的なものにABLB検査というのがありますね。
ホスト:ABLB検査。
ゲスト:これは、左右の耳で同じ音をどのくらいの大きさで感じているか、これを比較する検査です。補充現象があると、難聴側の耳が、ある音量を超えたところから、急に健聴側と同じか、場合によってはそれ以上に大きく感じ始めるという特徴が出ます。
ホスト:へぇ~。
ゲスト:あともう一つ、SISI テストというのもあります。これはですね、ごくごくわずかな音量の変化、例えば1dBとか、そういう小さい変化に気づけるかどうかを見るんですね。補充現象があると、この小さな変化にかえって気づきやすくなるという性質があるんです。
ホスト:へー、面白いですね。そんな風にわかるんだ。
ゲスト:はい。で、これらの検査で陽性、つまり補充現象があると判定されると、多くの場合、それは内耳性の難聴、 つまり今回のテーマである突発性難聴とか、あとはメニエール病のような内耳自体に原因がある可能性が高いことを示唆します。
ホスト:なるほど。
ゲスト:逆に例えば聴神経腫瘍みたいな内耳よりもっと多くの問題。これを後迷路性って言いますけど、そういう場合には補充現象は、まあ、通常は起こりにくいんですね。
ホスト:じゃあ、原因を探る上での結構重要な手がかりになるわけですね。
ゲスト:そういうことです。診断の一つになりますね。
ホスト:なるほど。で、さらに資料を読んでいくと、もう一つ、自記オージオメトリという聴力検査。これの結果の解釈も・・・ちょっとこう簡単じゃないぞと。突発性難聴は内耳の障害だから、Jerger分類っていうタイプ分けだと、II型っていう内耳障害を示すパターンが典型的だとされてる。でも!
ゲスト:そうなんです。ここがまたちょっと従来の考え方を揺さぶるような点でして。そのJerger分類でII型のように持続する音に対する反応が時間とともにこう、だんだん小さくなってしまうパターン。これは一般的には予後不良、つまり治りにくいサインと考えられてきたんですね。
ホスト:ええ。
ゲスト:ところが今回の資料によれば、明らかに治りにくいとされるそのII型とか、もっと複雑なIII型とかIV型 あるいは、II型とIV型が混ざったようなパターンを示していても、実際に聴力が回復するケースがあの、少なくないという報告があるんです。
ホスト:え、そうなんですか?検査結果としては、あまり良くないパターンなのに回復することがある?
ゲスト:まさにそうなんです。 これはやっぱり突発性難聴の回復のメカニズムには、まだ私たちが完全には分かっていない要因が何か関わっているんだろうと、それを強く示唆していますよね。
ホスト:うーん。
ゲスト:検査結果っていうのは、あくまで一つの指標であって、それが絶対的な予後を決定するわけではないということなんですね。なぜ回復するのか、そこにはまだ大きな謎が残されていると言えますね。
ホスト:いや、奥が深いですね。 ちょっとまとめてみますと、突発性難聴というのは、単に片耳が聞こえにくくなるだけじゃなくて、まず左右の聴力差による脳への負担があると。それから、治療に使うステロイドが思いがけず精神的な副作用、例えばうつ状態とか音への過敏性を引き起こす可能性もある。 そして、聴覚補充現象という、難聴なのに特定の音が逆に大きく響いてしまう、非常に厄介な症状を伴うことがある。こういうすごく多面的な状態なんだということですね。さらにその聴力検査の結果、例えばJerger分類とかが必ずしもその後の経過、つまり、治るかどうかを決定づけるわけではない。そういう複雑さも抱えていると。
ゲスト:ええ、まとめるとそういうことになりますね。
ホスト:なるほど。
ゲスト:では最後に、これを聞いているあなたが、さらに思考を深めるための問いを一つ投げかけさせてください。検査上は回復が難しいとされる所見、例えばJerger分類II型とかですね。そういう所見がありながらも、現実に聴力が戻る人々がいる。 この事実を前にした時、私たちは突発性難聴の回復について、一体何をまだ見落としているのでしょうか。回復を後押しするかもしれない、まだ私たちが知らない要因、未知のメカニズムとは一体何なのか。ちょっとこの問いを頭の片隅に置いておくと、このテーマへの理解がまた一つ立体的になるかもしれないですね。
※出典1 全日本病院出版会 ENTONI No.54 「突発性難聴」
※出典2 金原出版 SCOM033 EBMからみた突発性難聴の臨床